公衆電話と14歳の君の声。

あの頃は携帯電話なんて持ってなくて、公衆電話でよく君と話した。デートの誘いも他愛もない会話も喧嘩も別れ話も。
君と僕で気持ちの見せ合いっこを毎日してた。
あの頃の僕は誰よりも君のこと知っているって本気で思っていたよ。
それなのに、僕らは気持ちの見せ合いっこを辞めた。
今の僕は、君の気持ちどころか、居場所も電話番号さえも知らない人になってしまったよ。
でも不思議だな、受話器越しの君の声だけはまだ覚えてるんだ。
ほら、今も受話器から聞こえてる。
君が最後に残してくれた「お元気で。」
元気かどうかは僕自身もよく分かってないけど、なんとかやってるよ。
君はどうかな、元気かな、笑っているかな。
幸せかな。
届かないことは知ってるし、今更だけど言わせてね。
「どうか、お元気で。」
僕はそう言って、10円玉を入れていない公衆電話の受話器を、そっと置いた。

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